口腔ケア用バイトブロック「ゆびまもりか」「ゆびまもるん」が 静岡新聞に紹介されました

風は東から

「バイトブロック」駿東歯科医師会×日商産業

開発者の遠藤由香院長(左)と小島隆行社長

開発者の遠藤由香院長(左)と小島隆行社長

バイトブロックはシリコンで覆われており、傷がつきにくい

バイトブロックはシリコンで覆われており、傷がつきにくい

先端に穴があるものが医療機器(ゆびまもりか)穴がないものは介護現場や家庭用の製品(ゆびまもるん)

先端に穴があるものが医療機器(ゆびまもりか)穴がないものは介護現場や家庭用の製品(ゆびまもるん)

歯科や介護現場では、口腔ケアの際に施術者の指がかまれたり、傷ついたりすることが度々起きる。今回開発された「バイトブロック」は、障がい者や口を開けにくい方の補助器具だ。以前からプラスチック製品はあったが、患者がかんで割れた破片が喉に詰まって死亡するという痛ましい事故があり、長らく販売が中止されていた経緯もある。
医療、介護現場ではホースを指に巻くなど個々に工夫していたが、代用品でしかなく安全な製品が望まれていた。
パイトプロックは、ナイロン製の本体をシリコンで覆った。万が一、内側が割れてもシリコンがあるので粉砕しにくい。また、柔らかいため歯が滑らず、唇や口角に当たっても傷つきにくい。
先端には穴があり、ここからカテーテルを入れ、たんや唾液を吸引できる。反対側の穴は、脱落防止のひもを通すと喉に落ちる心配がない。
施術者の指を入れる内径はMとLの2種類を用意。介護現場で多く利用する女性の指のサイズを考慮した。考案者のうさぎ歯科遠藤由香院長は、自身も時間をつくっては訪問治療を行っている経験から「介護施設や自宅など、利用することが多い女性の視点を意識した」と語った。
開発のきっかけは、PVCが開設当初から続けている、医療現場のニーズを吸い上げる活動だ。静岡がんセンターをはじめ近隣医療機関の医師や看護師などの「現場の困りごと」を製品化するもので、すでに80品目以上が現場で使用されたり販売されたりしている。
開発を手掛けた日商産業(長泉町)は樹脂加工メーカーで、オリンパスに40年間、部材を提供している。10年前からPVCの支援、協力のもと医療機器製造販売業の許可を受けた。また、臨床試験は遠藤院長が所属する駿東歯科医師会が協力し、静岡がんセンター歯科口腔外科の百合草健圭志部長らが試験の成果をとりまとめた。
遠藤院長は「現場のニーズは高いが、今まで大学教授らが挑戦しても製品化できなかった。それは、PVCのようにニーズを吸い上げ、協力してくれるメーカーとの仲を取り持つ機関がないためで」と語る。
同社の小島隆行社長は「当社はものづくりはできるが、アイデアがない。PVCに声を掛けてもらうことでチャレンジでき、次の新しい方向性が見える。長年、部材は提供してきたが、医療機器の製造・販売が可能になることで、世界が広がった」と10年の経緯を振り返った。医療機器メーカーとしてバイトブロックを含め3件の開発に取り組んでいる。
現在は量産化に向けた最終段階に入っており、大手の口腔ケア製品メーカーから年度内に販売される予定だ。小島社長は「仙台で行われた老年歯科医学会に持っていったところ、反響が大きく、多くの皆さんが待ってくれていることを肌で感じた。この製品で介護する方の負担が減ればいいと思う」抱負を語った。

『静岡新聞』 2019年10月24日 朝刊「風は東から」
サンフロント21懇話会企画・・・シリーズ7
「医療現場の課題解決図るファルマバレーの方程式」